1時間ほど眠って、うさぎは目を覚ましました。
「あぁ、僕は眠ってしまったんだね」
「そうよ」
先生は答えました。
うさぎは先生の様子が変わっている事に気が付きました。
「君、どうかしたの?さっきまでの君じゃないみたいだ」
「私は、コーヒーで、お砂糖で、クジラで、雨に濡れた音楽よ」
とても優しい気持ちで、先生は答えました。
うさぎは目を丸くして、とても驚きました。
「僕の好きなものばっかりだ!」
ふたりは少しの間じっと見つめ合うと、にっこり笑いました。
暫くすると、外でぱらぱらと乾いた音がし始めました。
「星が降り始めた、一緒に見よう」
「ええ」
「ずっと一緒にいる?」
「ええ」
当たり前のように、先生は答えました。
時計の針の音が、静かにかちかちと夜に響き続けました。
懐かしい気持ちを、大きくて優しい夜のクジラたちがかき混ぜていました。
<おわり>