2009年7月22日水曜日

青鬼の褌(ふんどし)を洗う女



もう夏ですね。
本屋さんが夏の100冊フェアとかはじめてます。

先日も書きましたが、坂口安吾が好きです。
荒っぽくて男の人のごつっとした文章なのに、
ものすごく透明感があって、泣けます。

以下、短編「青鬼の褌を洗う女」の最後数行です。
↓↓

「秋になったら、旅行しよう」
「ええ」
「どこへ行く?」
「どこへでも」
「たよりない返事だな」
「知らないのですもの。びっくりするところへつれて行ってね」
彼は頷く。
そしてまたコクリコクリやりだす。

私は谷川で青鬼の虎の皮のフンドシを洗っている。

私はフンドシを干すのを忘れて、谷川のふちで眠ってしまう。

青鬼が私をゆさぶる。

私は目をさましてニッ コリする。
カッコウだのホトトギスだの山鳩がないている。
私はそんなものよりも青鬼の調子外れの胴間声が好きだ。

私はニッコリして彼に腕をさしだすだろう。


すべてが、なんて退屈だろう。

しかし、なぜ、こんなに、なつかしいのだろう。
<青空文庫より引用>






物語は「匂いって何だろう?」
っていう、すこし女性的な始まり方をします。
 そして性とか、恋愛とか、見栄とか、全部地獄に持っていこうとする鬼(主人公が恋をする久須美という「醜男」)の寂しさと優しさに行き着きます。



虚無感に包まれながらも、何度も読んでしまいます。





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