2011年6月29日水曜日

うさぎと先生6

駅のホームで、先生はうさぎに声を掛けました。
「ねえ」



「こんばんは」
うさぎは言いました。

「渡したい物があって」

「これを食べさせてあげたくて」
先生は小さな袋を取り出しました。

「水を沢山吸った音符よ。きっと鯨が喜ぶわ」
さらさらと、袋の中で音符が動いています。

ふたりは試しに、
本の中の鯨に音符を食べさせてみました。

ざわざわと鯨たちがあつまり、
カチカチカチとそれぞれの歌を歌い始めました。



沢山の時計が一度に鳴っているようで、それはとても静かに夜の駅に響き渡りました。

<つづく>

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